炎上する第3号被保険者年金問題、本質はどこに

週刊ポストに「働く女性の声を受け『無職の専業主婦』の年金半額案も検討される」という記事が掲載されました。
この記事がウェブ版に転載されると瞬く間に炎上。その後、毎日新聞が、確かに社会保障審議会年金部会において「年金半額案」への言及がなされたものの、必ずしも本格的に検討されていたわけではないことを報じ、週刊ポストの記事も批判されるに至っています。

ネット上の反応を見るに、批判の論点は大きく3つに分けられるのではないでしょうか。第一に第3号被保険者の年金給付額を減額しようとしていること、第二に専業主婦を「無職」と表現したこと、第三に「働く女性」と「専業主婦」の対立を煽ったことです。

1985年に導入された第3号被保険者制度は、雇用されて働く夫に扶養される妻の個人としての年金権を確立するものとして評価されてきました。
多くの場合は夫である世帯主を通じて妻の老後生活を支えるという世帯単位の制度から、妻に年金を直接給付する個人単位の制度への変更という性格を持っています。

なお、第3号被保険者分の保険料は、保険料率を上昇させつつ、既婚かどうかや性別を問わず第2号被保険者が一律で負担することになりました。

第3号被保険者制度には、女性の年金権確立に貢献したという意義があります。しかし同時に、結婚しているかどうかや配偶者の雇用のあり方によって加入する保険が異なることが、生活保障としての逆機能を招いていることを見据える必要があります。

実は第3号被保険者制度が「女性間の対立」として論じられるのはこれが初めてではありません。むしろ、1990年代後半以降、女性が結婚し、子どもを持ち、配偶者に扶養されるということが当たり前でなくなってから、ことあるごとに論じられてきた問題であると言えます。

そんななかで今回、専業主婦の立場からのみならず、働く女性の立場からも「無職の専業主婦の年金半減案」報道を批判する動きがあったことは、これまでの論争とは異なる現象かもしれません。家事や育児の責任を無償で担う人々が経済的な依存状態に陥ってしまいがちであることに改めて気づかされるきっかけにもなりました。

その意味で年金財政が悪化したことに対して場当たり的な対応するよりも、例えば既婚かどうかや配偶者の雇用のあり方にかかわらず、収入に応じて保険料を負担するような制度の方が望まれているのかもしれない、そう年金制度に関する負担と給付の関係を根本的に考え直すことが、求められているのではないでしょうか。

このような人々の貢献に社会がどのように応えるべきかは、第3号被保険者制度とは別の問題ながらも大変重要な課題であると言えるでしょう。

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