サブスクリプション化の影響で顧客体験が最大の差別化要素に その① ~カスタマーエクスペリエンスを本気で考える③~

大きなムーブメント、サブスクリプション化が進む

様々な場面で出会うようになった「サブスクリプション」という言葉。
今までの“お買い物”の概念を大きく変化させるトレンドです。

では、サブスクリプションとはどんな意味か、ウィキぺディアで検索してみると、

利用者はモノを買い取るのではなく、モノの利用権を借りて利用した期間に応じて料金を支払う方式。コンピュータのソフトウェアの利用形態として採用されることも多い。
 
英語の「サブスクリプション」(英語: subscription)には雑誌の「予約購読」「年間購読」の意味がある。そこから転じて「有限期間の使用許可」の意味となった。

 
商品やサービスを買い取って“自分のもの”とするのではなく、利用権を“借りて”その期間の長さに応じて料金を払う方法です。元々、雑誌の年間購読が語源になっていると言われるとよくわかります。TUTAYAのDVDレンタルもレンタカーもサブスクリプションということになります。
 
サブスクリプションを積極的に採用し始めたのはソフトウェア業界でした。
商品を構成する要素が元々がデータですので、サービス提供に対する原価が非常に少ない。つまり、高収益体質です。
また、利用者ごとにコストが変化することもありません。多くのユーザーがサービスを使えば使うほど、商品をコピペしてDVDを焼けば焼くほど利益が増していきます。
 
しかし、従来の1つのパッケージを販売する方法ですとバージョンアップの手間とコストが増え、ユーザーが安価の同等サービスや最悪海賊版に流れてしまう可能性があります。また、DVDにデータを焼いて、紙の説明冊子を作り、店頭に運び、量販店で販売するという方法はせっかくのデータ提供でのサービスの長所を潰すことでした。

そこでクラウドという概念が生まれてからのソフトウェア業界は、商品提供をサブスクリプション(有期限契約)に切り替えて大きく成長しております。
 
今、office各ソフトを量販店で買ってDVDからインストールしている人はまれですし、デザイナーでadobeのクリエイティブツールをパッケージで買っている人もほとんどいないでしょう。初期コストがかからず、手軽で自動的に最新バージョンにアップグレードしてくれる、定額制=サブスクリプションでの契約をしていると思います。
 
そして、データ(bit)だけでなくアトム(atom)の成果にもサブスクリプションアは浸透しつつあります。
例えば、車は鉄や電子機器がふんだんに使われているため、もともとの費用を回収するためサブスクリプションで契約する、など考えもできませんでした。
 
しかし、自動車がインターネットとつながり使用頻度や部品の痛み具合などの細かなデータが取れるようになってきています。また完全自動運転を目指して各社が技術を高めているいます。つまり、データが蓄積されればサブスクリプション化は可能になってきます。
 
月額払えば自動車の診断を自動で行ない、修理に出すタイミングで新しい車種にスイッチ。
保険契約などのわずらわしい作業もサブスクリプションにすれば、メーカーが過去の走行距離を検出して、最適な保険をチョイスしサブスクリプションに上乗せしてくれる。
 
上記のようにサブスクリプションがこれほどまで早く、大々的に広まっているのには訳があります。
それは、顧客のマインドが“所有”から“活用”に移りつつある、ということです。

自動車はステータスではなく、単なる移動の手段となります。
自分しか持っていない、ではなく賢く楽に便利を享受したい、になります。

この変化は今後も続くでしょう。
 
 

adobe社が与えた大きなインパクト

サブスクリプションに関して、先進的で大きな経営決断したのがアドビ社でした。
アドビ社とはグラフィック制作、ムービー制作、WEBデザイン作成などのデザインツールを販売する企業です。
 
一昔前までは家電量販店のソフトコーナーにパッケージがおかれておりました。
パッケージは紙のボックスで色とりどりの洗練されたデザインがパッケージに描かれていました。
1つのパッケージが20万円などのプライスタグがついていて、デザイナー専門のツールで個人が持てるものではなかったのです。
 
2011年、経営マーク・ギャレットCFOがクリエイティブ・スイートのパッケージ販売を縮小し、サブスクリプション課金方式を採用することを発表しました。その時、パッケージ販売収益は34億ドル、粗利益率は94%とビジネスモデルとして確立されたものでした。投資家にはまったく理解できません。なぜなら今のままでも高収益事業だったからです。
 
しかし、アドビ社の考えでは

  • ユーザー増加率の鈍化(最終的には減少に転じる)
  • ユーザーニーズに追いつけないアップデートサイクル(18ヶ月~24ヶ月に一度のアップデート)
  • リーマンショックなどの大不況時に対する対策不足(販売率が20%も低下)

の3つの大問題が存在していました。
 
そこで経営陣が選べるチョイスは

 ①今までの印刷出版の影響力を維持しつつ、デジタルパブリッシングの動向を追いかける
 ②コア商品であるクリエイティブ・スイーツの掛け金を倍にして、印刷とデジタルの両方の世界を包囲する

でした。
 
アドビ社の経営者はリスクを取りチャレンジする後者を選択肢、2011年デジタルサブスクリプションに大きく舵を切りました。発表後のアドビ社の株価は暴落します。投資家が収益の長期化による財務体制を疑ったからです。実際に収入は35%減少しました。
 
しかし、サブスクリプション方式に舵を切って3年後、3年前の売上をサブスクリプションが上回り経営陣の挑戦が実を結びました。また、株価も2011年には約25ドルであったものが2019年1月時点で244ドルと約10倍の価値がついています。
収益面でも70%が定期収益(サブスクリプション)となっており素晴らしい財務体制となっています。
経営の教科書に記載されるほどの成功を収めています。 

もっと詳しい内容はこちらの書籍に載っております。

 
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