マーケットイン型?プロダクトアウト型?柔軟な考え方が成果を産む ~カスタマーエクスペリエンスを本気で考える②~

前回、AIやビックデータからは顧客理解はできない、と書きました。
AIでは拾いきれない人間のリアルなニーズ ~カスタマーエクスペリエンスを本気で考える①~
日々の顧客目線に立ったヒアリング、観察、意見の吸い上げという地道で複雑な方法でしかニーズやハッスルは理解できません。
 
今回はカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)の理解と反対に位置する従来の「プロダクトアウト」の思考を掘り下げ、そこから何をしなければいけないか、を書いていきたいと思います。
 

プロダクトアウトにあこがれる日本企業

iPhoneに代表されるような、斬新なコンセプトの商品を市場に投入し、大成功するプロダクトイノベーション型のストーリーが顧客理解を躊躇させます。
日本人のものづくり気質がそうさせるのか、マーケットイン型のアプローチに反発する方が多い気がします。

マーケットを理解し、顧客体験を細かく調べて製品を作る、と説明すると以下のような呪文が繰り返されます。

  • 顧客に意見を聞くとありきたりなものしかできない
  • “新しいもの”の開発にユーザー意見は必要ない
  • 競合製品と似たものになり、差別化ができない
  • 重箱をつつくような細かな批判と過剰な要望しか聞けない
  • ユーザーの要望にしたがって作った商品やサービスが大失敗すること多くある

などなど、新しい物や体験は企業が作り出すものだ、という固定概念が透けて見えます。
 
プロダクトイノベーション型のストーリーは大きなギャンブルです。
サイコロを振って6分の1の確立に掛けているようなものです。成功すればマーケットを支配し大きな影響で、企業規模を大きく伸ばせますが、6分の5の確立で負けて資金と時間、リソースを失い何も残りません。
 
高度成長期、バブル期と成長期はそれでよかったのです。物自体がなかったので不満、ハッスルが沢山ありました。
その不満を解消する何かを開発できれば大きくヒットするわけです。
 
“音楽を移動中に聞きたい!”そんなニーズが潜在的にあったので、ウォークマンが大ヒットしました。
“気軽で低価格な移動手段が欲しい”というニーズがあって、スクーターが大ヒットしました。
“本格的なカメラがなくても写真が撮りたい”というニーズがあって、写るんですが大ヒットしました。
 
さて、物があふれ、サービスがいき渡った現代で新しい斬新的なアイディアの種がどれほどあるのでしょうか?
原始的なニーズやハッスル(不満)はほぼ満たされいる状況です。時代と共にニーズやハッスルは移り変わります。プロダクトイノベーション型の開発で業界に殴り込みを掛けるのも良いかと思います。しかし、大きな掛けです。全財産をテーブルの上において一発勝負のスロットをまわしますか?
 

地道で労力がかかるマーケットインは敬遠される

反対にマーケットイン型のストーリー作りは既存サービスやハッスルにフォーカスした開発方法です。
全てのニーズ、ハッスルは永遠に満たされること無く、顧客体験の理解によって地道に改善をしていく、という思考方法です。
 
派手さはありませんが堅実な方法です。
今あるニーズやハッスルをヒアリングしますので、商品を作ってマーケットにリリースしたけが全く需要がない!なんて大きな失敗もありません。
 
しかし、上記のような担当者の声のように、顧客への聞き方を間違えると意味のない情報=“ノイズ”が入ってしまいます。
また、年に一回や新商品開発の際に実施する、など単発になると、移ろいやすい顧客思考の理解ができず失敗の山が築かれます。
 

  • 常に顧客思考に耳を傾ける。
  • 常に顧客のニーズを満たすようにアクションする。
  • 常に顧客のハッスルを解決する。

この一個一個は小さな改善が巨大なブラント力と圧倒的な商品力を作る唯一の方法です。
 
尽きることのないニーズとハッスルを常に解決し続けることでしか、生き残りができない世の中なのです。
では、どうやってそんなことができるのでしょうか?概念論の次は実施策ですね。
 
マーケットイン型?プロダクトアウト型?柔軟な考え方が成果を産む ~カスタマーエクスペリエンスを本気で考える②~ 挿絵
 

4つの代表的な顧客理解ツール

一年に一回のバースデープレゼントをミスすることはできません!
そこでプロトタイプを作る前、商品企画、事業計画を作るもっと前から顧客理解を進める準備を始めなくてはいけません。
ニーズやハッスルを理解してからアイディアを持ち寄ってプロトタイプを作っていきましょう。
そこで4つのツールを紹介、解説します。

  • メンタルモデルダイアグラム
  • エクスペリエンスマップ
  • カスタマージャーニーマップ
  • サービスブループリント

一つ一つに違った利用方法がありますので、次回から事例を交えて解説します。
 
ポイントは顧客理解ができればやり方はシンプルに、という点です。
この手の解説を見ると律儀にルールーに則って行わなくてはいけない、とかかれているのですがそれがとっつきづらくしている一番の原因だと確信しています。
 
顧客が何に対してニーズを持っているか、何に対してハッスルを抱えイライラしているか、を知るだけでも大きく顧客思考の理解に進みます。
最初から複雑にして実施が大変、などとならないように最初はシンプルに始めてみましょう!
(日本人の勤勉さからか、完璧出ないと実施できない、という思考の方はそろそろ頭をやわらかくしなければいけません)
 
 

まとめ

世間をあっと言わせるような斬新な商品を発表するプロダクトイノベーションはギャンブルです。
マーケットイン型の改善プロセスを取り入れ、基礎を固めてからイノベーションを起こしましょう!
 
マーケットイン型のストーリーを作るには顧客へのヒアリングが重要です。
4つの顧客思考の理解に役立つツールを次回から紹介します。