AIでは拾いきれない人間のリアルなニーズ ~カスタマーエクスペリエンスを本気で考える①~

今回から「カスタマーエクスペリエンスを本気で考える」と題して連載を行いたいと思います。

最近、AIやビッグデータなどの新しいテクノロジーが今までの仕事の仕方を変える、と大々的に報じられています。
「AI」の検索数も2018年をピークに大きなワードとなっております。

数字をメインに扱うマーケティング業界もAIによって効率化が進み、人間が考えるよりもAIに任せた方が最良の施策が生まれる、などと聞きます。
または、ビッグデータから重要なデータを抽出しユーザーにとって最適なマーケティングができる、とかですね。
 
今回は新規商品開発既存商品の改善に本当にAIが最適なマーケティングができるのかを考えてみたいと思います。

それでは第一回の「AIでは拾いきれない人間のリアルなニーズ」の始まりです!

 

AIってなに?

AIとは「artificial intelligence(人工知能)」の略語です。
つまるところ、22世紀に登場する(予定?)“ドラえもん”ですね。その初期段階に我々はいます。
人間と同じような感情を持ち、人間以上の知識を備え、人間を越えていく(シンギュラリティー)とされているAIです。
 
しかし、それはドラえもんと同じく想像上のもので、実際には我々が生きている間には実現はできないそうです。
それは何故か。現在のAI研究ではロボットは情報の積み重ねでしか知識を蓄えていけないからです。

こちらの本「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」で初心者にも非常にわかりやすく紹介されています。
AIに関して興味を持っている方はぜひ一読ください。
 

 
「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」を参考にして例えると、例えば「楽しい」という言葉。
人間であれば自分が楽しかった記憶や他者が感じる楽しさを感情として理解し、アウトプットできます。
そして、体験や知識を取り入れもっと「楽しい」事を新しく作り出していけます。

しかし、ロボットに対する「楽しい」というのは数字の羅列でしかありません。「楽しい」というワードにたくさんの情報を紐付けることはできます。
 楽しい=美味しい食事
 楽しい=デート
 楽しい=ゲーム
 楽しい=子育て
などなどです。

この“=”後に出てくるワードが教師データと呼ばれています。

つまり、人間が「楽しい」と認定した教師データを積み重ねていくことがAIの知識になっていきます。教師データに無いものは「楽しい」に当てはまりません。例えば、美味しい食事と覚えこませましたが、まずい食事だって最高のパートナーとの楽しい思い出の一部になりえます。またはそんなまずい食事の記憶が、毎年正月に実家に帰るといつも繰り返される定番の面白い話になったりするわけですね。

つまりここでは
 楽しい=まずい食事(時間の経過によって変化)
となるわけです。

まずい食事が「楽しい」ことと人間が認定して教師データに入れなければ、AIは「楽しい」という感情になりません。
 
AI開発の一番の問題点は教師データをどのように作るか、だそうです。
日本の科学者は人間よりすぐれたAIを生み出そうと躍起になっているそうですが、アメリカでは最初からそんなの無理!とAIの一番得意とする大量のデータの効率的な活用に研究対象を絞ってサービス化させているそうです。
 
AIと聞くと万能なイメージがしますが、研究者たちは教師データを作り、覚えさせるというひたすらに地味な作業を永遠行っているのですね。本当に大変です。
 
 

なぜAIでは人間のニーズは拾えないのか

AIとは情報の積み重ねで知識を身に着けていくものであって、物事に対して瞬時に理解し、良い悪いを判断できないものです。
ましてや、「良いと思うけど倫理的にどうなのか?」「悪いけど社会構造的にはあり」などの理解は相当難しいです。
 
また、人間の社会は少しづつではありますが、大きく変化していきます。
例えば、今、私が直面している「子育て」。
 
30年前の子育て、20年前の子育て、10年前の子育て、今の子育て、全てが少しづつ違います。
 
30年前は自分が両親に育てられていた時代。
女性の社会進出はそれほどでもなく、核家族化もそれほど進んでいなかった。
家にはおばあちゃん、お母さんがいつもいて、お父さんは帰ってくるのが遅くって。兄弟は比較的多く3人とか4人とか。
子育てが家族の仕事として認識されていた環境があったと思います。

しかし、今の子育てでは核家族化が進み、祖父母とも一緒に暮らしていない現状で共働きが増えている。
母親の負担が大きくなっているが、男性の育児への協力がその分増えたかといえばそうでも無い現状。
 
 
30年前の母親の悩みと、現在の母親の悩みは一緒でしょうか?
経済的、社会的な変化もあり悩みは複雑になっているのではないでしょうか。
 
さて、「子育て」だけでこんな変化しているのに教師データを作ってAIに物事を覚えこませる、可能でしょうか?
 
 

ニーズの発見、ハッスルの解決は人間のお仕事

ニーズやハッスル(困りごと)は人間にしか関知できなく、共感できるのは人間だけです。
昔から行われてきたことですが、人の話をしっかりと聞く、そんなスタンスがAI全盛の時代に必要です。
 
変化の激しい時代だからこそ常にユーザーの心理を理解しなければいけないのですが、どうやって顧客心理をつかんでいけば良いのでしょうか?
 
それは「乾坤一擲型の商品開発、改善」から「七転八起型の商品開発、改善」にシフトしなければいけません。
つまり、失敗を大前提としたユーザー視点型の視点にシフトする必要があります。
 
流れとしては

  • ユーザー心理の理解
  • 仮説の立案
  • 小さくアクション
  • 成功、失敗のジャッジ
  • 成功ならば大きくアクション
  • 失敗ならばユーザー心理に理解に戻る

一連の動作をスピーディーに行っていける環境を社内で作る必要があります。
 
 

まとめ

AIは人間の感情を感じ取り、新しいものを生み出すことは苦手です。それは教師データという人間がジャッジしなければいけない要素が多分にあるからです。
新しいニーズ、今あるハッスルは人間が感じ取り小さなチャレンジを失敗を恐れず行うことが重要です。
 
次回からは具体的にどのようにニーズとハッスルをすくい上げるか、を解説いたします!